発行物紹介

BiTvol7

『うちのメイドは不定形』静川龍宗(スマッシュ文庫)

 ショゴスがメイドさんになるお話。これ以上に説明しようがない作品。作中でも言われてるけど、展開が恐ろしくベタ。人外との出会い、謎の結社、主人公がかばって死ぬ、なんだかんだで生き返ってハッピーエンド。これをベタと呼ばずして何がベタだろうか。しかしベタであることは悪いことではないのである。『ニャル子さん』のようにサブカル系のネタが詰め込まれているが、なんとなく衒学的な感じを受ける。これはきっと原案の森瀬氏の趣味であろう。主人公が読書狂で家が汚いとかお前どこの森瀬だよと言いたくなった。クトゥルフ的なところは様々な解説書を手掛けた森瀬氏が原案なだけあってしっかりしているが、もっとクトゥルフ的な要素詰め込んでも良かったんじゃないかと思う。その分がほかの衒学的要素にいってしまっており、すこし残念に思う。挿絵に関しては絵は良く、テケリさんが可愛い。しかし挿絵の不定形なシーンが髪の毛を触手に変えているくらいなので、どうみてもイカ娘にしか見えないのが問題だった。  次回作が出るかは売れ行き次第ということなので、みんな買えばいいと思う。次回からはもっとクトゥルフしてると非常にうれしい。(toshi)

『インシテミル』米澤穂信(文藝春秋)

 『インシテミル』は、「古典部シリーズ」や「小市民シリーズ」で人気を博す青春ミステリ作家「米澤穂信」が、ミステリのみを追求したという意欲作・冒険作である。 作者のウェブサイトから引用すると、曰く「過去八冊は、多かれ少なかれビルドゥングスロマンとミステリの割合を比で表すことができましたが、今回はミステリだけです」とのこと。「ビルドゥングスロマン」とは「教養小説」、つまり青少年の成長や人格形成をテーマに書かれた小説のことで、同作者の多作品と比べてみるとその違いは分かりやすい。};  ストーリーに関して言うと、正直、残念な出来と言う他ない。これまでに主なテーマとしてきたものをあえて抜いたのは野心的で結構なのだが、代わりのものを詰められなかったのは問題だ。一言でいうと、小説として中身が空っぽなのである。  ミステリ部分に関して言えば、本人が言うだけあって設定がよく練られており、矛盾や破綻もないように思える。登場するアイテムは多くが過去の名作ミステリから取られており、ミステリファンを喜ばせる描写も多いだろう。また、「どう殺したか」よりも「誰が殺したか」に重きを置いており、犯人当てゲーム的な小説が好きな人にはおすすめできるかもしれない。  ミステリとしての出来は良いが、作品全体としては凡作という印象。(柴田)

[ゲーム]『ゴーストトリック』CAPCOM

 ニンテンドーDSのミステリーゲーム。逆転裁判シリーズを作っていた人の新作で、面白さはキッチリ受け継がれている。受け継がれているポイントは大きく二つ。まずひとつはストーリー展開。ぼんやり散りばめられた伏線が劇的に立ち上がって、どんどん世界を広げていく。もう一方はキャラクターや会話。逆裁のあの、とんでもない奇人変人ぶりはややマイルドになっているけれど、楽しさは減っていない。会話も、以前から演劇っぽいセリフ回しが特徴的だったが、その点は大きく進化している。サイドビューでキャラクターの全身が画面に入るという視点がそもそも演劇っぽいし、大げさな身振りや照明の演出は明らかに演劇っぽさを狙っている。そしてそれが実に楽しい。  ゲーム性については完全新作と言える。脱出ゲーム+ピタゴラスイッチと言ったところ。死亡時刻の四分前に戻れる能力と、モノにとり憑いて動かす能力を組み合わせて、死を回避する。現場にある限られたモノを、うまいタイミングと順番で動かし、死の原因を取り除く。露骨すぎないセッティングと親切すぎないヒントが、心地よい難易度を作っている。  ミステリ好き、パズル好き、逆転裁判好き、あるいは演劇好きに特にオススメ。WEBに体験版もあるので、興味があればそれをぜひ。 (森)

[映画]『プランゼット』粟津順

 全編CGによる新時代特撮ロボット映画。古いのに新しい、新しいのに懐かしいという謎の感覚におちいった。  西暦2053年、人類は絶滅の危機に瀕していた。突如出現した謎の地球外生命体の侵略によって、地球は人口の大半を失った。人類の反撃作戦も虚しく、失敗が続く中、日本方面軍は最終作戦「プランゼット」を実行する・・・  地球外生命体、巨大ロボット、最終兵器など、特撮には欠かせない要素がたくさん盛り込まれ、まさに娯楽作品といった仕上がりになっている。最近の映画に多い虚飾はこの映画には一切なく、本当にストレートな作品となっている。派手な演出、熱いセリフ、なめらかな動きは、グッとくるものがある。特に戦闘シーンはこの映画最大の目玉であり、圧倒的な迫力である。  全編CGということで、人もCGで描かれているのだが、どこか温かいものを感じた。それが、懐かしいという感想を抱かせたのだろう。仕草の一つ一つが本物の人間っぽく描かれ、表情も豊かだ。この映画のテーマである「家族の絆」がうまく表現できていたと思う。予算の都合か映画自体の時間が短く、そのため深く掘り下げた内容は無かったが。  CG映像で特撮を描くというのは新しい試みだと思う。今はコンピュータでなんでもできる時代だ。この新時代特撮が、映画界に新たな領域を切り拓く布石となることを、切に願いたい。(ワタナベ)


Last-modified: 2010-07-10 (土) 22:35:44 (3055d)