ビッグ・バンの風に吹かれて

 初出と著作を読むと寡作な作家である。タイトルに引かれて図書館で借りてきた。もちろん科学書ではないのであしからず。

 見つけた私としては、掘り出し物だったと言わざるを得まい。非常に興味深く、かつ面白い作品ばかりだった。

 収録作品の『岬の貌』『ビックバンの風に吹かれて』に出てくる「X氏」、読者をまるでこの人の行動の観察者に仕立て上げ、この「X氏」の異常な行動を、「論理的に正しいことをしているだろ?」というように同意を求めてくるような感じで引き込まれていく。

 百日間ふり続く雨、日常の繰り返し、そんななかでこの「X氏」の狂気、ビックバンの風を感じてしまった彼は創造主=神になった。

 雨が百日間ふり続いたら?

 もの静かな文体の中に、言いようのない説得力がある。1974年と1975年に発表された『夏薔薇』と『投射器』、その他の作品は1987年以降に発表されている。明らかに違うものがある。

 前者は、普通に、日常のドラマのなかで「死」を語ろうとしているのに対し、後者では、日常を描きながらも、それは既に普通の日常を語ろうとはしていない。既に「純文学」から逸脱し、安部公房のような狂気を描いている。

 最近この手のジャンルに興味がある。SFという訳ではないけれどもSF的であり、純文学では決してない作品のことである。SFセミナーで「スリップストリーム」というスターリングの定義(詳しくはセミナーのレポート見てね)があるということだったが、この作品も似たようなもんだ。ただし、この手のもんを見つけるのはなかなか難しい。なんかいいものあったら教えてくらはい。

(松野)


Last-modified: 2006-09-18 (月) 04:29:12 (4446d)