空洞地球(ルーディ・ラッカー)

いわゆる地球空洞説に発想を得たフィクションに列挙される数々の問題――地球が空っぽなわけないじゃん、そもそも明かりはどうなるの?重力の向きは?などなど――をエレガントに解決したのが本書である。しかし本書の内容ときたらエレガントとは程遠い。さすがラッカー!さすが“狂気の数学者”!

南北戦争前のアメリカを舞台に、ひょんなことからエドガー・アラン・ポオと出会い地球の中へと探検する羽目になる少年が主人公である。『アーサー・ゴードン・ピムの物語』やら『早過ぎた埋葬』やら(ひょっとしたら『アモンティリャードの大樽』かも)『大渦の中へ』やら『大烏』やらポオの諸作品がフィーチャーされておりそれだけで非常にニコニコなのだが、黒人少年との掛け合いやときに血みどろのドタバタのせいで『ハック・フィンの冒険』じみた様相すら呈してくる。

そして本書の素晴らしい点は科学風味ロマン冒険譚として読める――むしろそれ以外に読めない――くせに、作者による真顔の解説のせいで一瞬にしてハードSFになってしまうことである。これはノーマン・スピンラッドの『鉄の夢』にも勝るとも劣らないどんでん返し構造のはずなのに、読後の印象が「オウムガイうまそー、ポオかわいそー」な辺りラッカーの凄さ、変態さがあるといって過言では無いだろう。(片桐)


Last-modified: 2007-04-11 (水) 01:06:48 (4119d)