反逆の星

「カードらしくない」とある人が言った。

 傑作冒険SFと紹介されているが、反論を恐れぬ言い方をすればこの本は「(コンピューター的)ロールプレイングゲームSF」だといえるだろう。

 再生力が異常に強くてめったな傷では死なないが、勝手に手や足がはえてくるので、余った手足はちょん切って物々交換(対価はこの星では採れない「鉄」である)の品物にしてしまう。そんな一族の王子が国を追い出され、特異な能力を持った(=フリーク)種族の国を放浪して、その能力を修行で自分のものとし、世界の調和を乱すものを討ち取る、とまあそんな話し。少し毛色の変わったヒロイックファンタジーだが、「ダブルクラウン」作家(*)だけあり世界構築がしっかりしているので読んでいて不安になることがない。

 現実には存在しない肉親や召使いになりすましてその存在を信じ込ませてしまう巧妙な能力で国を乗っ取る「にせもの」の一族。それが真に倒すべき敵であることに主人公が気づくのは、延々物語が半分を越えてからである。アニミズム的哲学を持つ一族を(言い方は悪いが)改心させて協力を請い、自分の故郷を除くすべての国に散らばった「にせもの」の一族を絶滅させた後、「弟」だと名乗る「にせもの」を殺すため主人公は故郷に戻る。本当は存在しない「弟」を殺すために。だが「弟」は本当の意味で自分の分身であった。放浪中に死にかけたとき自分の腹から分かれた、そして自分に殺されかけた記憶を持つ自分の分身。それが「弟」の正体であることがわかったとき、主人公は恋人と二人で世を捨てることを決意する。「自分を殺したものに自分を演じることはできないのだ」と知って。

 カードの作品は『エンダーのゲーム』しか読んでないが、『エンダー』よりも単純に読んでおもしろい簡単な話である。主人公もラスト二つ前のシーンまで何も難しいことは考えていないから読みやすいし−−−ただ腐っても、というか−−−

 とにかく最後はカードらしい結び方だったので好感の持てる一冊であった。

 「いやいや、やっぱりカードですよ」

*(細かいことを付け加えると、本書の元になる作品は『エンダー』よりも早く書かれたので、書き上げた時点ではダブルクラウンではなかった。賞を受けたあと、ストーリーを変えずに細かい言い回しをかえるなどして改定出版したのが本書である。)

(TMS!)


Last-modified: 2006-09-18 (月) 04:22:17 (4446d)